長野県塩尻市こども相談チャットアプリ「ぽーち」実証インタビュー
サービス名 | 子ども相談チャットアプリ ぽーち |
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自治体名 | 長野県 塩尻市 |
導入時期 | 2024年06月 |
自治体人口 | 約65,500人 |
実証事業の目的/事業概要
近年、不登校児童生徒数が増加し続けており、全国で喫緊の課題となっています。また、90日以上の不登校であるにもかかわらず、学校内外の専門機関等で相談・指導等を受けていない小中学生がたくさんいることも明らかとなっています。
塩尻市では、「一人ひとりの育ちに、ていねいに向き合う教育」を教育理念として、教育委員会組織の中に児童福祉を所管する部署を設置するなど、教育と福祉がチームで支援する体制を構築してきました。また、長野県から派遣されるスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーに加え、市独自に「子と親の心の支援員」を派遣し子どもや家庭を支える取り組みや、学校教育指導員や指導主事が現場の先生たちを伴走支援する取り組みなどを進めております。
そうした中で、子どもたちがSOSを一人で抱え込んでしまうことがないよう、これまでの取り組みを補完する目的で1人1台端末への相談アプリケーションの実証をはじめました。なお、実証にあたっては、教員の長時間労働の実態や心身の不調による休職・離職者の増加などが社会問題化していることから、現場の先生たちの負担に配慮した仕組みを目指しました。

運用方法について
塩尻市が関係する小中学校14校約4,600名の1人1台タブレット端末に子ども相談チャットアプリ「ぽーち」を導入し、「心と体の調子を認知する機能」と「匿名チャット相談機能」の対応を塩尻市教育委員会の子と親の心の支援員が行いました。なお、気がかりな内容の相談があった子どもについては、チャット上で本人の同意を得たのち個人を特定し、直接的な支援につなげました。
検証成果・効果①

①約3割の児童生徒が匿名チャットを利用。小学校高学年からの相談が多い。
令和6年6月から12月までの実証期間中の匿名相談機能入力件数は延べ46,292回で、1回でも入力したことがある児童生徒数は1,410人(全児童生徒数の30.0%)でした。また、延べ10回以上入力したことがある児童生徒数は644人(全児童生徒数の13.7%)で、学年について調べると、小学校高学年(4年生から6年生まで)の人数が多いことが分かりました。
検証成果・効果②

②これまで未支援だった74人を新たな支援につなぐことができた。
実証期間中に「いじめ」や「死」などの気がかりな内容の相談があった児童生徒165人中、148人が学校も教育委員会も支援対象として把握していない児童生徒でした。そのうち74人については、学校をはじめとする関係機関へつなぎ、必要な支援を開始することができました。
検証成果・効果③

③いじめ、学校への通いづらさ、自傷行為・希死念慮を抱く児童生徒を把握することができた。
実証期間中の相談入力内容について調べた結果「いじめ」という言葉は193回、「(学校に)行きたくない」という言葉は85回、「死にたい」という言葉は72回使用されていました。こうした相談に対しては、共感的理解を第一にアプリ内で相談を続けながら、相談者を個人特定し、教育委員会から学校などの関係機関へつなげることができました。
また、塩尻市が独自に調査している学校におけるいじめの認知件数が、実証開始以降、前年度に比べて大幅に増加しました。
今後の展望
実証事業のまとめを行った会議では、委員より「自分の悩みを内に秘めてしまう子どもにとっては大変有効なアプリだ。」という意見や、「どんなことでも気軽に話せる相手がいることが、児童生徒の安心感につながる。」という肯定的な意見が出された一方で、「担任が児童生徒に『何かあったらアプリに相談しようね。』と言うのは違和感がある。学校側も、担任と児童生徒との信頼関係の構築や、気軽に話せる安心・安全で楽しい学校づくりをより一層進めなくてはならない。」という意見も出されました。
今後は、引き続き「ぽーち」を活用したSOSの早期発見・早期支援の取り組みを進めるとともに、学校・家庭・地域・行政が連携し、子どもたちが周りの大人に気軽に相談できる環境づくりを目指していきます。